本稿は,定量的な分析を通じて国内大手の製薬企業におけるイノベーションの決定要因を明らかにすることを目的としている。分析には,国内大手製薬企業を対象に質問票調査回答を得た43社の結果データを用いた。分析の結果,1) (1)バイオ医薬品保有企業,(2)年間売上高200億円以上の製品保有企業とも,専有可能性を高める活動として特許による保護と利益確保に取り組んでおり,その成果を享受していること。2)バイオ医薬品保有企業群は技術機会を図っている一方,年間売上高200億円以上の製品保有企業群では,技術機会が図りきれていない可能性があること。3)国内大手製薬企業が,バイオ医薬品を保有,年間売上高200億円以上の製品を保有する上で,特に大学(医学部・薬学部)が影響していることから,オープン・イノベーションモデルが適合する可能性があることがわかった。本稿には,検討すべき多くの課題が依然として残されている。第1に,定量分析としては,サンプル数が43社に留まっていること。第2に本稿でのイノベーションとの因果関係については推定の域を出ないということ。第3に,国内大手製薬企業におけるオープン・イノベーションモデル適合の可能性を述べるに留まり,十分に議論されていないということが挙げられる。
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