2024 年 38 巻 4 号 p. 420-432
国際卓越研究大学や地域中核・特色ある研究大学強化促進事業などの近年の大学改革政策は,大学の変革へ向けた戦略策定を条件に,多額の資金を一部の大学へ配分し,それにより国全体の研究力の発展を図ることを目指している。一方で,大学改革政策は,各大学が計画を達成したかのプロジェクト評価はなされるものの,大学改革事業がいかに国レベルで効果を上げているかを,エビデンスに基づきプログラム評価することは十分に行われてこなかった。本稿では,地域研究大学の強化を促進する事業を事例に,評価やモニタリングの枠組みを検討する。少数の大学に資金を配分することが国の研究・イノベーションシステムの構造変化をもたらし,国全体への効果が得られるロジックを明確化する必要性を指摘したうえで,ネットワーク・オブ・エクセレンスを核とする研究重視大学,グローカルなイノベーション・エコシステムにおける起業家的大学,地域変革型イノベーションにおける変革型大学の類型ごとの評価の課題を検討する。